じいちゃんとワンコと…日々の生活

子供達が独立して、ワンコとの気楽な生活になるはずだった。母が亡くなって、末っ子なのにじいちゃんをひきとることになり、まだまだ忙しい日々が続きます。

ばばバー

11月半ばを過ぎると、私の仕事はつらい時期に入る。4月上旬くらいまで、超つらい。同じ職種の男性でもつらいと言う人もいるのだから、女性ならなおさら。


私の仕事はバーテンダー。今流行りのガールズバーではない。ちゃんと勉強したバーテンダー。こう書くと、ガールズバーの女の子には反感を買ってしまうだろうが。。。

そもそも、私が今のお店を開店したのは10年前。当時は「ガールズバー」なんて言葉はなかった。「バーテンダーは男性」と決まっていたわけではないが「男性であるべき」、そして人によっては「男性スタッフのみの店」という先入観はしっかりと根付いていた。

だから、オープン当初はドアを開けて中を覗き込み「スナック?」と言う客も多かった。そう言われると私は「スナックならこの先です。」と冷たく答えた。表にはっきり「BAR」と書いてあるし棚の酒類を見ればバーであることは一目瞭然なのに、それがわからない客はあとあとトラブルの元になるからである。


オープン後2年は当時大学生だった長男がボウタイに黒ベストでバーテンダーをしていた。どうせバイトするならうちでやりなさい、と。男の子のバーテンダーがいても、女性がいればスナックだと思われたのである。


長男は卒業後、ちゃんとしたところに就職し、バーテンダーも卒業した。新たにバーテンダーを雇うか私がやるか…かなり悩んだ。お客様の意見は「ママがやるべき」で一致していた。この店の魅力は、この独特の雰囲気。うちの店のその雰囲気が他所とどう違うのか、私にはよくわからないが…。お客様方は、他人を入れて店のカラーが変わってしまったら困ると。。。


毎晩店に泊まり込み、丸氷の作り方、カクテルの作り方、それぞれのお酒の味や特徴を学んだ。始発の電車で自宅に帰り、子供達の朝食やらまだ高校生だった娘達のお弁当を作り、ワンコ達(当時は3匹いた)の散歩、掃除洗濯夕飯の仕度etc。睡眠時間は3時間あればいい方。それが3〜4ヶ月続いた。


バーテンダーの修行なんて、極めようと思ったらキリがない。ある日、バー通のお客様がいらした時、その方がぽつんとおっしゃった。

「ママさんはもう立派なバーテンダーですよ。」

それで泊まり込みは止めた。おそらく、その方は私が毎晩泊まり込みで練習しているのをわかってらしたのだと思う。それで顔色も相当悪かったのだと思う。

そして別なお客様も「経験がなくてバイトで入ってもバーテンダーだと言ってる人もいます。バーテンダーは国家資格ではありません。カクテルの味は店によって違います。蕎麦屋によって出汁の味が違うのと同じです。あなたはとても優しい味のカクテルを作ります。ウィスキーの味はどの店も同じです。その味に雰囲気がプラスされて店の味になるんです。もっと自信を持っていいんですよ。」

これで自信がついた。どこどこの店と違うのヘッタクレのと言う客には堂々と「これがうちの味なので」と言えるようになった。


私はかなり気が強いのである。


BARの語源には諸説ある。アメリカの西部開拓時代、酒場の入口に馬を繋ぐ横木(bar)があったからとか、客が勝手にお酒を取らないようにカウンター上に横木を這わせたとか…。今では立ち寄り場所、つまり「とまり木(bar)」が主流である。


冬場はバーテンダーにはつらい時期。スナックやクラブと違って1杯でも気兼ねなく寄れるから週末に限る店ではないが、平日と比べると金曜は幾分お客様が多い。お客様が多いと、それだけ冷たい氷を触る回数が多くなるわけで…。

常連さんに水割りの方はおらず、当店ではオープン以来ロックは丸氷と堅く守ってきた。丸氷を1度に何個も作ると、軽〜く、軽度の凍傷になる。

土日は左手の指先が感覚ないなぁ、って感じ。週明けには指先の皮が厚ぼったい。そして週半ばになると、ベロンと皮がむけることもある。そしてまた土日に感覚がなくなり、の繰り返し。



これに加えて家事の手荒れもするから、イイヒトに手を握られて(=´∀`)なんてことにもならない。せいぜい手をさすられて「クリームつけなよ」と言われるくらい。とほほ。


中にはゴム手袋や軍手をして氷を作るようにとおっしゃるお客様もいるけど、目の前で氷を作るのは一種のパフォーマンス。素手で作るべき、が私のポリシー。


今日また皮がむけた。

私の店がある東京下町にもガールズバーがたくさんある。他の店との格差をつけるためにも、素手でカッコよく作らなきゃ。


ところでタイトルの「ばばバー」だが、ガールズバーが多くなってきた時に私が言ったうちの店のジャンルである。熟女バーと言われてカチンときた。

当店は色気を売りにしていない。確かに私は和服でビシッと決めて店に出ているけど、お客様を電話やメールで呼んだり、気があるそぶりで引いたりは絶対していない。お客様が来たいと思った時に立ち寄ってくれればそれでいいのだ。だから、あぁいうスナックやクラブみたいな店と一緒にされては困る。ではなんと言うか…。

ババァがやってるBARだから「ばばバー」である。



56ですが、なにか?

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