じいちゃんとワンコと…日々の生活

子供達が独立して、ワンコとの気楽な生活になるはずだった。母が亡くなって、末っ子なのにじいちゃんをひきとることになり、まだまだ忙しい日々が続きます。

施設探し6⃣

数日後、私達の希望No.1の施設から返信があった。

すぐにでもOK。

ただし部屋の調整やら担当者の調整、態勢を整えるのに2〜3日待ってほしいとのこと。


なんのなんの、2〜3日なんてあっという間です。

入居にあったって必要な物のリストは見学の時にもらったプリントに書いてある。

それらを揃えるだけであっという間。


入居は翌週の大安の日にした。

じいちゃんはもう、いちいちカレンダーを見て良い日悪い日を考えるようなことはしないけど、どうせなら良い日がいい。


ここで困ったことが起きた。

プリントには「水洗いできる衣服」とある。

クリーニング屋さんでも水洗いしかしてくれないそうだ。

下着はコットンだから洗濯機でジャブジャブ洗えるけど、上に着るシャツやズボンは洗えるものがない。

デイサービスに行っていた時に使っていたリハビリ用のトレーニングウェアくらい。

じいちゃんはほとんどの人生を旅館の経営者として過ごしてきたので、普段着なるものをほとんど持っていなかったのだ。

私達もスーツ姿の父親像しか見ていなかったので「じいちゃんはスーツが一番似合うね」という先入観しか持っておらず、じいちゃんの普段着は普通の人のお出かけ着。

ポロシャツ類はダンヒルやらディオールやらで、洗濯機で洗えるものはない。


ダンヒルだろうがディオールだろうが、いまさら、洗濯機でジャブジャブ洗ってくれていいんだけどね。

でも施設側ではそうはいかないみたい。

結局、ユニクロやヨーカドーを回り、何着か揃えた。

ポロシャツは着脱が楽な被りのもの、ズボンも介助の楽なウエストゴムタイプ。

サイズも大きめ。

身体にフィットしたものより大きめの方が介護が楽なことは、ここ1年でよくわかっている。

ただ丈、ズボンの丈だけはほんの少し短めに直した。

転倒するのは歩行時だけではない。

着替えの時が一番危ない。

介護者は服の方に目がいってしまいがち。

足元にズボンの裾がまとわりついていたりしたら転倒しちゃう。


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桜満開の時期に、じいちゃんは新しい環境に移った。

病棟のナースさん、ヘルパーさん達が病室に挨拶に来てくれた。

じいちゃんは認知といっても、記憶の混乱がある程度で騒ぐわけでもなく、介護者側にしてみたら手のかからない優等生だったらしい。


ちょうど着替えをさせていた時、若い男性の介護士さんが挨拶に来た。

「私がしますよ、今日で最後だしね。着替えの前にトイレは大丈夫かな?」

すると、じいちゃんが言った。

「名前は忘れちゃうんだけど、この人は一番よく面倒を見てくれたんだ。」

「だったら、名前くらいちゃんと覚えてよぉ〜。」

じいちゃんはその介護士さんの手を握って、ありがとうと涙していた。


じいちゃんが一番大変だった時に面倒を見てくれていた病院のスタッフの方々、本当にありがとう。


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介護タクシーの運転手さんは女性だった。

女性だからというわけではないけど、とても親切で細かいところまで目がいく。

病院の近くに桜並木があったのだが、他のクルマがいないからとスピードを落としてくれた。

「ほら、じいちゃん、桜が咲いてるよ。」

ほんとにわかっているのかどうかは疑問だけど、じいちゃんは「綺麗だなぁ」と喜んでくれた。

来年、桜を見られても桜だってわかるかしら。。。。。


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施設に移って2ヶ月になろうとしている。

最初の頃は夕飯が終わると帰ろうとしていたじいちゃんも、今ではすっかり新しい環境に慣れてきた。

職員さん達から「昨日帰ろうとしたんですよ」とか、見舞いの帰り際に一緒に帰ろうとされると、とても心が痛い。


ごめんね、じいちゃん、家でみてあげられなくて。

私だって自分の手で世話してあげたい。

でも実質、ムリ。

自分達の生活だってあるし。

それでもクタクタになって介護し、肉体的にもギリギリ、精神的にも追い詰められて、それで得るものは自分で面倒を見たという自己満足だけじゃない?

私達は「自分の気持ち」よりもプロの介護を選んだ。

キリキリした張り詰めた顔を見せるより、少し気を楽にして「本当の笑顔を父に見せること」を選んだ。


施設での1日は、午前中はリハビリやリクリエーション、午後はサロンで他の入居者さん達との交流。

リクリエーションはただのお遊びではなくアタマのトレーニングにもなっているから、なるべくジャマしないように、お見舞いに行くのはおやつが終わる4時過ぎに行くようにしている。

最初の頃は毎日、翌週からは一日置き、今は週に1〜2回。

行くたびに水羊羹やゼリーを手土産にしている。

じいちゃんはコーヒーが好きで、施設に移ったその日から「この近くに美味いコーヒー屋はないか?」と言っていたのだが、飲み込み時に咽せるのでコーヒーはおろかお茶やジュースも🆖

施設で用意したとろみをつけた飲み物しか飲めない。

コーヒーはお土産のコーヒーゼリーで我慢してもらっている。


昨日駅ビルの地下でスイカのゼリーを見つけた。

冷蔵庫でギンギンに冷やしてある。

じいちゃん、今日はスイカのゼリーを持っていくよ。


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